ブランディング事例 -学校法人カナン学園 三愛学舎-
こころにまき続ける、“希望の種”を。
学校法人カナン学園 三愛学舎(岩手県二戸郡一戸町)
事務長 箱﨑浩二さん
特別支援学校
三愛学舎ホームページ
http://sanaigakusha.net/“食”や“作業学習”を通じて自己肯定感の回復へと導く
本校には自己肯定感の低い状態で入学してくる生徒も少なくありません。私たち教職員は、生徒一人ひとりの可能性を時間をかけて見つけ出し、自信を持って生活できるように導いています。
自立的な生活の基盤として大切にしているのが“食”です。本科の生徒は毎日の昼食を自分たちで作っています。献立づくりや予算の管理、買い出し、調理から後片づけまで協力して行い、“食”を通して実生活で役立つ技術だけでなく、命、健康、自然の恵、感謝、協力などたくさんのことを学びます。
助け合って生きる社会の実現には地域とのつながりも欠かせません。専攻科の生徒は作業学習で種をまくところから花を育て、地域のお客さまに販売しています。自分が携わったことを喜んでくれる人の存在が、自己肯定感の回復に大きな影響を与えています。
閉鎖的になりがちな状況を打破するにはミッションが必要
2022年7月には、クラウドファンディングや補助金により新校舎を建て替えました。木のぬくもりに包まれた広く安全な校舎で、生徒たちはのびのびと学んでいます。旧校舎から移設した薪ストーブがみんなの憩いの場です。
こうして生徒たちの成長を見守る私たちですが、課題は山積みです。単独校のため他校との交流も少なく、閉鎖的になりがちです。日々の生徒対応や卒業後の進路の確保に追われ、三愛学舎の存在意義を考える余裕もありませんでした。
三愛精神は教職員全員の行動指針になっています。しかし、それとは別に事業の目的を示すミッションが必要ではないか?と考えていたとき、経営の上位概念はミッションであることを提唱するクエストリーさんに出会いました。
コンセプトを実務に落とし込み、業務改善につなげていく
オンラインミーティングを数回行い、三愛精神がミッションともいえるのではないかという考えが浮かびます。そこで、2023年4月から6カ月間にわたり、事業の方向性を示す「コンセプト確立プロジェクト」をお願いしました。
櫻田さんにナビゲーションをしていただき、プロジェクトメンバーで話し合う過程でコンセプトが確立。それを短いメッセージで表現したコンセプトステートメント「こころにまき続ける、“希望の種”を。」も完成しました。
次なるステップはコンセプトの実務への落とし込みです。コンセプトの解釈を現状の仕事に当てはめるのではなく、業務改善につなげなければ意味がありません。新年度計画にも盛り込み、コンセプトの具現化を推進していきます。
根強かったのは、過去の踏襲や変化を避ける意識でした
コンセプトを実務に落とし込み、業務改善につなげていくために、コンセプトの解釈と編集に取り組みました。現状の思考の枠を広げるために、自由にアイディアを出し合う「大風呂敷ミーティング」も行いました。
しかし、コンセプトに基づき変えようとしながらも、過去の踏襲や変化を避ける意識が根強いことを実感しました。現場からは同調圧力という言葉も出てきました。そのときに、櫻田さんから提案されたのが「カルチャーの確立」でした。
コンセプト確立プロジェクトのメンバーの一部を若手に入れ替え、6ヶ月間のプロジェクトがスタートしました。最初に行ったのは、「カルチャー=文化」とは何かの共有でした。さまざまな事例を元に話し合いを重ねました。
「変化することが良し」を前提にしてカルチャーを検討する
次に過去に発刊した節目の記念誌を紐解き、三愛学舎の創立に関わった人たちの想いを振り返りました。同時に保護者や外部の支持の声も分析しました。それを元にして、いまの時代に求められるキーワードを探し出すことにしたのです。
その過程で、検討の方向性を「変化することが良し」を前提にすることに決まりました。「三愛学舎の現実を直視し、危機感を持とう」を合言葉に、何度もミーティングを行いました。次第に熱量が高まっていくのを実感しました。
話し合いから生まれた考えや言葉を検討し、組み合わせるなかで、骨格が定まり、3つのフレーズから構成されたカルチャーが確立されました。浸透のための6つのロードマップを決め、教職員に発表し、一つひとつ実行に移しています。